第1回 「風立ちぬ」(2013)宮崎駿
「きみはピラミッドのある世界と、ピラミッドのない世界と、どちらが好きかね?」
はじめまして、今さら映画レビュアー ねこぐすです。
はてなブログでは、「今さら観たの!?」な映画のレビューをときどき書いていこうと思います。
※ネタバレが嫌な人はブラウザをそっと閉じてください。
皆さんはどんな感想を持ちましたか?
私は、今までの宮崎駿監督のジブリ作品とは全然違う、大人の作品だな、と思いました。
合計3回観た感想は、
1回目→妙な違和感があるけど、感動
2回目→二郎さんは冷酷な人間かもしれない・・・
3回目→カントク本音出し過ぎ(笑)
です。
まず、1回目は何もストーリーが分からない状態で最後まで観たので、人物の細かい動きやセリフには気が回りませんでした。
ただ、観終った後に違和感を感じました。
その違和感の原因は主に2点あり、
①ヒロインである菜穂子さんが、あまりにも二郎に都合のいい女性に描かれているということ
②ラストのカプローニさんのセリフとそれについていく二郎。
でした。
それで、2回目は二郎に注意しながら観てみました。
すると、出てくる出てくる。
二郎の冷酷さ。
飛行機に夢中になるあまり、
その他をないがしろにする二郎の性格が。
例えば、
・妹との約束は必ず忘れる。
・本庄以外の設計士への冷めた対応。
・フランジの梱包紙を何のためらいもなく払いのける。
(住友金属から送られてきた試作品の梱包に新聞が使われており、そこには日本が日中戦争に突入していく戦況が書かれていた)
熱中していることはトコトン追及するが、それ以外の対象には全く興味を持とうとしない二郎の姿が浮き彫りになります。
また、重要なポイントとして、時折り挿入される二郎の夢があります。その中には必ずカプローニさんが出て来て二郎を励まします。
ですが、これはあくまで夢です。
実際には面識のないカプローニさんが言っている言葉は、詰まるところ、二郎が言って欲しい言葉でしかありません。
そしてこれは、最後の夢にも関係してきます。
これらを踏まえて、「二郎は何て自己中心的な男なんだ・・・」 と感じました。
3回目は菜穂子さんに注目してみました。
美人で、教養があって、男を立てて、美しいところしか夫に見せない・・・
あまりにも都合が良すぎる(笑)
仕事づくめの二郎をけなげに待つヒロイン・・
これって監督の理想の嫁じゃない?
監督のプライベートにはあまり詳しくないですが、息子の吾郎さんと仲が良くないこと、奥さんに「親らしいことは一度もしたことがない」と非難されている噂は耳にしたことがあります。
また、この菜穂子さんは堀辰雄の同名小説のヒロインがモチーフになっています。
この原作と本作のヒロインが違うところは、彼女がサナトリウム(山の療養所)を自分で抜け出すところ。
原作では夫が療養所で付きっ切りの看病をしますが、この作品では彼女が自分から療養所を抜け出して仕事をする夫の元へ向かいます。
都合良すぎ・・・!笑
とまあ、いろいろ書きましたが、カントク本音出し過ぎです。
二郎が親のいない子供たちにシベリアケーキをあげようとするシーンがありますが、子供たちはそれを受け取らず逃げてしまいます。
それを本庄に話すと、自分がしたことは偽善であり、自分たちの作る飛行機は貧困にあえぐ人々を犠牲にして作られていることを言われます。
これも昔の監督が抱えた葛藤なのではないかと思います。
そして、途中で出てくるカプローニさんの言葉、
「きみはピラミッドのある世界と、ピラミッドのない世界と、どちらが好きかね?」
で、二郎は飛行機を作る道を選びました。
つまり、ピラミッドがある世界です。
この映画のメッセージを私なりに解釈すると、
●ピラミッドがある世界
貧困や不平等があるけど、革新やアートがある社会
●ピラミッドのない世界
平等で格差がないが、進化のない世界
「俺はピラミッドのある世界を選ぶが、お前らはどっちだ?」
という監督の言葉が聞こえてきました。
以上。
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