「今さら!?」 映画レビュー

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第3回 「インサイド・ヘッド」(2015) ピート・ドクター

「人間の成長と、感情の変化」

 

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はじめまして、今さら映画レビュアー ねこぐすです。

今日も「今さら観たの!?」な映画のレビューを紹介します。

 

※ネタバレが嫌な人はブラウザをそっと閉じてください。

 

今日はピート・ドクター監督の「インサイド・ヘッド」(2015)です。

有名なアニメ制作会社ピクサーの一風変わったストーリーのアニメです。

 

 

原題の意味とストーリー

 

内容は、11歳の主人公ライリーの頭の中の感情たちが繰り広げるドラマです。

 こんな難しそうなテーマでも、ピクサーにかかれば、老若男女が楽しめるエンターテインメントに変わります。

 

さすがですね!

 

さて、この映画のテーマを読み解くにあたってまず重要なことが、「原題の意味を知る」ことです。

洋画のタイトルは日本版にする時に、往々にしてリネームされます。

これは、日本人がとっつきやすい名前にして、より多くの人に観てもらうために必要な作業ですが、原題のもっていた意味を失うことがあります。

 

この作品はそうです。

 

邦題は「インサイド・ヘッド」ですが、原題は「Inside Out」(インサイド・アウト)です。

 

「あんまし変わってないじゃん…」

 

と思われるかもしれませんが、大きく違います。

Inside Out は裏返し、表裏逆さという意味で、take inside out は裏返しにするという意味です。

これが重要で、後で詳しく説明しますので、覚えておいてください。

 

ここからは、ざっとあらすじを説明します。

 

ライリーの感情であるヨロコビは、毎日彼女を楽しくさせることが使命。

他の感情、ビビリ、イカリ、ムカムカはライリーを守るための感情として働いているのですが、唯一カナシミだけ存在理由が分かりません。

なので、カナシミをのけ者にして毎日の仕事をしていましたが、ひょんなことからカナシミと一緒に感情の司令室から放り出されます。

指令室へ戻るために一緒に旅をしていく中で、ヨロコビはカナシミの存在する意味に気づいていく、という話で、

並行してライリーの行動も描かれているので、彼女の成長と感情の変化がどう関係しているのかを観るのが面白い作品です。

 

ビンボンというキャラクター

 

途中に登場するビンボンというキャラクター、人の成長と共に忘れられていく記憶の代表的な存在として描かれています。

 

記憶のゴミ捨て場で彼が消えていくシーンに涙した人も多いのではないでしょうか。

 

かくいう私も、涙しながらロケットで脱出するシーンを観ていました。

 

しかし、エンディングまで観た方は分かるかと思いますが、ビンボンが消えた後、彼については一切触れられていません。

 

彼に助けられてゴミ捨て場から脱出したヨロコビでさえも、です。

 

ヨロコビはあくまでヨロコビであり、今までと何ら変わることなく、ライリーを喜ばせるという自分の仕事をするだけの存在であり、他の感情たちにもいえますが、成長はないのです。

 

ライリーの成長

 

では、ライリーはどうか?

 

彼女は成長しました。

 

感情たちに支配された幼少期から、今度は自分が感情をコントロールできるようになったのです。

 

カナシミが無意識に思い出の玉に触ってしまい、球を悲しい思い出に変えてしまうシーンがあります。

あれは、感情たちがライリーの行動や気持ちをコントロールしていた時代からの変化ともいえます。

感情に支配され、ヨロコビを得るためだけに生きることができるのは、幼い頃だけです。

他人との関わりができて、自分の快楽だけを追求できないステージへ進むことによって、人は感情をコントロールする力をつけていくのです。

 

パパやママの感情たちは全員が司令部で落ち着いて座っています。

これは、感情をコントロールする術を身につけているからです。

 

カナシミの意味

 

初めにいった「Inside Out」つまり「裏返し」の意味するところは、カナシミの後にはヨロコビが生まれたり、イカリとカナシミは表裏一体だったり(後述)、感情は単純ではないということです。

映画終盤に2色の思い出の球がたくさん作られているように、感情にはそれぞれ意味があり、カナシミには「癒し」の効果があります。

ビンボンを立ち直らせたり、ライリーを家に帰らせたり。。

 

ちなみに、私はヨロコビみたいな人ばかりいる職場は嫌です。笑

目的があって、それを達成するためにけなげに頑張っている姿が彼女を憎めなくしていますが、あんな人が身近にいると疲れそうです。

 

ムカムカの存在

 

正直、ムカムカの存在は始めから疑問でした。

出番も少ないし、

 

「イカリの弱いバージョンじゃない?」

 

と自分の中では思っていて、どちらかというと「ハジライ(恥ずかしい)」とか、「タイクツ(つまらない)」とかの感情の方がしっくりくるな、と思ってました。

 

これも、日本人とアメリカ人の感性の違いなので、面白いですけどね。

 

感情のもつ意味を知る

 

この映画が教えてくれるものはこれです。

いろんな感情が、それぞれに意味を持って存在しているということを教えてくれる。

無駄な感情はないのだ、ということ。

観終わった後に、感情のもつ意味をざっと考えてみました。

 

ヨロコビ

 自己肯定

 自分を肯定することで、活力や行動をうながす。

 

カナシミ

 癒し

 自己と現実のギャップを埋める。自尊感情を取り戻す作用がある。

 イカリと親和性が高く、イカリとは表裏一体。

 

イカリ(ムカムカ)

 自尊感情の防衛

 自分の思いを守るために働く。

 有能感を感じられる自尊防衛(カナシミは無能感)。

 

ビビリ

 身体の防衛

 危険を未然に回避し、生存するために必要。

 

感情のもつ意味を客観的に理解できていたら。

私たちが落ち込んだ時の立ち直りも早いんじゃないでしょうか。

 

それにしても、こんな内的な狭い世界の話をよくもまあ、ここまでダイナミックに映像作品にしたな、と感じる素晴らしい作品でした。

ピクサーさすがですね!(2回目)

 

じゃあ今日はこのへんで。

さようなら!

 

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